夏が始まっていたことに気付いたのは、アイスコーヒーの氷が溶けきってからだ。どうやらこの街では、蝉が鳴かないらしい。随分と静かな夏だ。いつまで経っても、ストローを噛む癖も、スニーカーのかかとを踏む癖も治りそうにない。人と暮らしていたときに、…
あまりにもあつくなってしまったから、水でも飲もうかと冷蔵庫のドアを開けると、わさびだの生姜だののチューブがばらばらと落ちてきた瞬間、目を離したすきに鍋から吹きこぼれた野菜を茹でるための湯のように、作りかけの起爆スイッチの配線を誤ったように…
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