nuruinemuri

タイトルに偽りアリ

2022-01-01から1年間の記事一覧

来年のことを言うと鬼がわろてり

こないだ「クリープハイプのコピーを40曲はやった」という、ギターボーカルの痩せ細った大学生の男の子と話す機会があった。「藍ちゃんは何の曲が好き?」訊かれたので、大丈夫、さっきの話、手と手、愛は、あとなんか忘れたけど数曲答えた。「おれは強火フ…

だっこしてくれなきゃ殺す

いつも川で優雅に泳いでいた名前の知らない綺麗な鳥が、オバさんが撒いているパンくずに群がって、狂ったように暴れまわっていた。全然綺麗じゃなかった。頭上に向かって突進してくるし。冷めるときってこういうもんだなと思った。 何かが上手くいっていると…

ぬるい眠りにさよならを

万に一つの話、自分が結婚することがあるならば「死ぬまでずっと好き」より「いつか嫌になったら離婚しよう」「未来のことは1ミリもわからないけど今好きだからとりあえず、」と言われたい。前者だととにかく据わりが悪くなるだろう。一時の感情で、先の先の…

なぜか今日は殺人なんて起こらない気がする

“クリスマス寒波”と言われた日の晩。路上で酒を飲むために、寝起きの顔にやっつけ仕事でせっせと瞼にラメを置いて、ヒートテックを2枚着終えたところでアイコスを動かし、やっとLINEを開いた。通知が25件。あたしはその後すぐに「誕生日おめでとう」の言葉の…

彼氏がいると自撮りにいいねされないらしい

Twitterで、彼氏がいることを公言していたら、男の人から自撮りにいいねされなくなるらしい。だからもう載せません。うちの彼氏は、浮気されたら「自分に魅力がなかった」と思うらしい。だからもう他の男の子とセックスしません。 言葉より行動で示すのが大…

ラヴが大渋滞2

こんなに寒くなることを忘れていた。冬は、毎年きちんとやってくる。寒いのは苦手だけど、誰に対しても平等に冷たいその季節は、よっぽど生き物に誠実だと思う。今年も、静かに終わりが近づいている。 さみしい人たちほどよく喋る。その人たちは、LINEニュー…

さざなみのような感情と、ささやかな祝祭

天気まで操ることができるんじゃないのか。お天気がこんなにも良かったのは、初めてだったかも。雨が降っていない時点で、もう別モノになったんだと思わされた。 確か去年はファーコートを着て行ったな、今年もそろそろ着るか、と引っ張り出してきたそれを羽…

いなくなったあたしは神の子になれるかな

16歳の頃、地元のTSUTAYAで「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」をうっかりレンタルしてしまった。ジャケットがピンクで可愛かったから。帰宅してコンポにセットし、間違えて爆音で再生してしまって、イントロのギターでびりびり痺れた衝撃に比べちゃ、自…

第一回オジサンの下手くそ自撮りで神経衰弱大会

「SNSに肉の接写を上げて『えっちだ』というコメントを添える女のフェラチオは音だけうるさくて何にも気持ちよくない」。これは、日本古来から伝わることわざです。舐めんな。本気でお前の『えっち』な写真を上げてみな。そして舐めるのはチンコだけにしろ。…

神に愛されし者たちの休日

11月と思えないほど毎日あたたかい。冬物コートの出番はまだ先のよう。ライブで酩酊して、何故か西明石駅にいたため、翌日は流れで明石観光することに。本当はどうぶつ王国に行くために平日休みを取っていたのに、よりによって、よりによって休園日。これは…

自分が一番痛い時期を知っている人には人質に取られている気分 ②

アイシャドウのラメは、自分を可愛く飾るものなのに、誰かの頬や鼻や唇や、胸板に付いた途端、意味のないものに変わり果てる。全部拭いたくなる。あの晩は、大粒のホログラムを、涙と勘違いされただけだ。あたしは泣いたことがないもの。涙を流す価値すらな…

冬はオタサーの姫しか生き残れない

最後の日は、車で送ってもらったくせに、いつも逃げるように実家に帰っていた時みたいに、でもそれよりも極めてぶっきらぼうに「ありがと、ほなね」とだけ呟いて去ったその駅と町は、一年ぽっちじゃ何も変わっていなかった。観光地でもない場所にさえ適用さ…

君が死ぬとき思い出すのは推しの子だから諦めろ

情緒が終わり始めると、森羅万象に感謝し始めるきらいがあるので、絶対に始まりは思い出したくないし、絶対に感謝などしたくない。強烈に心を奪ったその人は、宇宙人だった。あたしの毎日を侵略した。それなのに、田舎の電線に大量に留まっている名前もよく…

やかましい孤独

初めて自分が社会に馴染めない、と気付いたとき、世界はこんなにもうるさいのか、と驚いた。田舎のショッピングモールのゲームセンターみたく、本当にうるさい。幼いながらに思い浮かべた「孤独」とは、ずっと静かなイメージだった。普段見ることがないよう…

あたしに金平糖を、意地悪な人には愛を

良くなるための薬を、久しぶりに再開したら、余計に身体がバグって、腹は千切れそうに痛むわ、血が足りなくてふらつくわ、で、気持ちも参ってしまって、家では寝てばっかいる。痛みで冷や汗をかきながらの言葉は、上手く頭に入ってこない。お願いだから、あ…

愛のSDGs

どうにもこうにも寝苦しくて、シーツの少しでも冷たい部分を探すような夜は今年はなかったかのように思えるほど、朝晩が涼しくなった。嬉しくなるのもさみしくなるのも、懐かしくなることも、いつも9月だった気がする。唐突だけど、結局どんなエロそうな女よ…

インターネット女の自撮りばかりいいねする男は法で裁かれる

あの子がまんこに錠剤を突っ込んでるうちに、洗濯物は乾き、引退した野球部員の坊主頭はちくちくと伸び、別の誰かの腹の赤ん坊は育ち、台風は過ぎた。涼しくて本当に嫌になる。芽生えかけた恋心の一つや二つもそりゃ冷める。 あたしが乗るときのJR神戸線は、…

赤い実はそのうちはじける

8月19日。 去年の今頃に何をしていたかなんて別にどうだってよくて、京都よりも何故か湿度の高いこの部屋で、今日も惜しみなくクーラーをつけている。夏場の、6畳1Kの台所は、サウナと錯覚するくらいに灼熱だ。苛立ちながら、ガスの元栓を開けたり閉めたりす…

夏は一人で眠りたい

夏が始まっていたことに気付いたのは、アイスコーヒーの氷が溶けきってからだ。どうやらこの街では、蝉が鳴かないらしい。随分と静かな夏だ。いつまで経っても、ストローを噛む癖も、スニーカーのかかとを踏む癖も治りそうにない。人と暮らしていたときに、…

女はギター 

あまりにもあつくなってしまったから、水でも飲もうかと冷蔵庫のドアを開けると、わさびだの生姜だののチューブがばらばらと落ちてきた瞬間、目を離したすきに鍋から吹きこぼれた野菜を茹でるための湯のように、作りかけの起爆スイッチの配線を誤ったように…

ハートに火をともせ!(神様なんていない)

古びた居酒屋の、和式を無理矢理洋式に改造されたトイレでゲロを吐いたら、始まりの合図。顔の皮膚を這うキラキラのラメは、おもちゃの銃で撃ち砕かれていた。あの頃あたしはそれが可愛くて仕方がなくて、真似して大粒のホログラムを雑に下瞼に置いてみたも…

猫少年 好きなバンドが活動を止めても生活は続く

最近、野良猫とよく遊んでいる。ふらっとやって来てはごろごろとのどを鳴らす生き物だ。遠くで、大きな音でのどを鳴らす日もあれば、あたしのせまい部屋で小さくごろごろと鳴くこともあった。近所に来ると寝床を与えているため、よく懐いてくれるようになっ…

あたし版関白宣言 灰皿に少しの水を注いで完成する丁寧な暮らし

膝下丈のジャンパースカートにfamiliarのお稽古バッグを下げた女子高生たちや、2泊3日はできそうな大きなバッグを持った金髪美容専門学生たちの笑い声は、ビー玉が床に散らばるみたいに、カラカラと音がする。春だ。電車に乗っている時は、それに揺られてい…

自分が一番痛い時期を知っている人には人質に取られている気分

ミニスカートで歩いていると、じっとりとした湿気が毛穴を覆う感覚で、あの夏もほとんどこんな気候だったかもしれない、と思いたくなった。 別にあたしは弱っていない。毎日楽しく幸せに過ごしている。しかし根底が変わっていないのか?やっぱり引き寄せの法…

深海加古川ダイビング

雨の予報を忘れバレエシューズを履いてきてしまった日は、憂鬱で仕方がない。どこまでも詰めがあまい。少しでも濡れないよう、水溜りをひとつひとつ避けながら、一歩ずつ丁寧に進む。それでも靴下までぐっしょり濡れた足元を会社の机の下でぷらぷらさせなが…

地獄へようこそ

地獄への入り口は案外すぐそこ。絵本で見るような、針山がそびえたっていたり、血の池がわかりやすくあるわけでもない。誰も教えてくれない。やわらかくて、あたたかくて、いいにおいまで思い出せると気付いたときには、もうそこに片足を膝下くらいまで突っ…

どんなに遠まわりしてもゴールが見えていることの幸せについて

残業後の街を歩くときは、決して知人と合わぬよう、最大限に気配を消すことが大事。疲労困憊だと、なぜか首を傾けたまま歩いてしまう幼い頃からの癖。金曜日、気絶した人ひとり背負ってるくらい重い体を引きずりながら、毛玉だらけのコートの襟元をマフラー…

いなくなったあの人は神様になっていた

真っ黒に染めて、かなり伸びたあたしの後ろ髪は、京都の2DKの部屋のドアノブに引かれて絡まっている。体温はセミダブルベッドの毛布に奪われっぱなしなので、いくら暖房をつけても冷え切っているし(初めての電気代は8000円だった、エアコンもヒーターも効い…

あんじょうやっとります

冬はたばこが美味い。特に、寒い朝一番に吸う目覚めの一本は格別だ。肺の奥からじんわりぬくもっていく感覚。夏は夏で美味い。普段メンソールは吸えないのに、わざと緑のハイライト選んでみたりする。いつだか友達が「夏は暑いからメンソール吸うねん」と言…

心の友よ 君の言葉だけが宝物

例えるなら、ソウルメイト。彼といると、プラトンの球体人間論にまじめに頷きたくなる。前世はきっと同じ人間だったはずだ。 「今年一番の寒さです」という予報通り、マスクから漏れる息でまつ毛が凍りそうなくらい寒い日だったけど、ダブルソールのマーチン…