nuruinemuri

タイトルに偽りアリ

心の友よ 君の言葉だけが宝物

例えるなら、ソウルメイト。彼といると、プラトンの球体人間論にまじめに頷きたくなる。前世はきっと同じ人間だったはずだ。

「今年一番の寒さです」という予報通り、マスクから漏れる息でまつ毛が凍りそうなくらい寒い日だったけど、ダブルソールのマーチンを履いたあたしの足取りは軽く、そのくせ遅刻気味だった。楽しみにしていた、遠くの街に住む人との約束の日。あたしがよく遊びに行った街に、イカしてるけどやけにあたたかそうな上着を着たその人が待ちぼうけているのが不思議で可笑しくて、小走りで駆け寄ると、動画を撮っていたらしく、「いつ来るかなと思ってさっきから撮ってたよ」みたいなことを言いながら笑われた。

今回はあたしのテリトリーだから、得意げにそこらを連れて行った。彼がいつかしてみてくれたみたいに、レコードをプレゼントしたり粋なことをしたかったのに、何もできなかった。彼は通りがかる店の看板や選挙のポスターや、さまざまな写真を撮っていたのが、ちょっとズレた観光客のようでかわいかった。お陰であたしも一緒に観光してるみたいな気持ちだった。

居酒屋で呑んでいるとき、その度に打った相づちが海馬にこびりついて鳴り止まない。「今年藍ちゃんはすごい頑張ってたね」と言ってくれて、遠くに住む人が自分のことを見てて知ってくれてるのは、こんなにも嬉しくて、救われる気持ちになるのだと、久しぶりにひとりの部屋以外で泣いた。いつも受け取ってばかりであたしは何か与えられているのかな。

次の日、今年初めて雪が積もった。降っていたことにすら気づかずに。おそろしいほどしずかだな雪は。道すがら三度転けた。マーチンは雪道には無理あったみたいね。

 

久々に今日の一曲

踊ってばかりの国ニーチェ