nuruinemuri

タイトルに偽りアリ

ハートに火をともせ!(神様なんていない)

古びた居酒屋の、和式を無理矢理洋式に改造されたトイレでゲロを吐いたら、始まりの合図。顔の皮膚を這うキラキラのラメは、おもちゃの銃で撃ち砕かれていた。あの頃あたしはそれが可愛くて仕方がなくて、真似して大粒のホログラムを雑に下瞼に置いてみたものだった。

適当な雑貨屋で買った適当なアロマキャンドルを灯し、それを眺めていると、あたしはあたしでいられる気がする。記憶喪失になるまでぐっすり眠りこけた。しかしこの2日間、火を消し忘れてしまった。ぱたた、と液体がこぼれ落ちる音で目が覚めると、キャンドルはアイスクリームみたく、だらりとだらしなく溶けていた。でも大丈夫だよ、減るもんじゃないし。

意味のないことをやるのはいつだって楽しいのに、意味を持たせようとするから辛くなるのだ。18才の頃に買った、無駄にでかくて、ぶ厚くて、歴史の資料集くらい物理的に重たい漫画を久しぶりに開いた。可愛かったあたしは、泣いたりもした。今読むと、外面ばかりが立派で、中のページはただの白紙だった。とっくのとうに辛くなんてならなくなったもの。あの頃泣きながら読んだ白紙の漫画のページを、くすくすと笑いながらめくっていると、紙からにゅっと細長い腕が伸びてくる。お前もアタシなんだよ、と馬鹿にされながら引きずられ、しばらくそこに閉じ込められる。細長い腕の女にまんまと首をしめられ、身体のすべての血流が止まって、苦しいのが気持ちよくなる頃、きっとこのページから抜け出せないんだと諦めたら、じめじめした夏の空気や、ちょっと不思議なキャンドルのにおいが、徐々に漂ってきた。やっぱり自分の部屋じゃないか。ずっとずっと欲しかった宇宙のような眼差しにとらわれて、ほとぼりが冷めた途端、神様はとっくに消えていたし、そもそも最初からいなかったのだ。他人の気持ちなんて一生わかってたまるか。

 

今日の一曲

Fuck Forerver / Babyshambles