nuruinemuri

タイトルに偽りアリ

ラヴが大渋滞2

こんなに寒くなることを忘れていた。冬は、毎年きちんとやってくる。寒いのは苦手だけど、誰に対しても平等に冷たいその季節は、よっぽど生き物に誠実だと思う。今年も、静かに終わりが近づいている。

さみしい人たちほどよく喋る。その人たちは、LINEニュースの誤字脱字がある1、2分で書き上げたような記事を間に受けるし、Twitterの動物動画の無断転載アフィ垢を脳死でRT &いいねする。さみしい人は、うるさい。あたしが訊いてもいないのによく喋る。うるさい。だからあたしは、絶対に本当のことなんて喋ってあげない。「待て」させられてよだれ垂らしたその人たちに、でたらめ吹き込んで、吐いた息が白くて、冬が寒くて本当によかったって言いたい。

 

あたしの脳みそには、引っ掻き傷がある。子供のころ、お母さんに叱られた晩、ぷっくりとした寝室の壁紙をこっそり爪で引っ掻く癖があった。お母さんを困らせたかったのかもしれないし、ただ単に壁が剥がれる感覚が楽しかったのかもしれない。自分でもよくわからない。あたしが眠っていた側には、今でもその跡が残っている。その壁紙みたく、あたしはあたしの脳みそも引っ掻き続けたため、傷は元には戻らず残っている。人に会うのがこわい日がある。酒の席の冗談で言われた言葉だろうに、今でも許せないし、こわい日がある。

つまり、自分の容姿が好きじゃない。人と会う日は、家を出る直前まで化粧道具片手に鏡と睨めっこをする。それでも駅のトイレでもう一度鏡を見ると、全然可愛くない人間が写っていて、帰りたくなる。でも彼が褒めてくれると、鼻の奥がツンとする。たった一杯目の酒で、顔がりんご病のように火照る。目からピンク色のハートのビームが飛び出る。そして最終的には、顔がでろでろに溶けてしまう。もう、可愛いとかブスとか、そういう概念がなくなるほどでろでろに。

f:id:seijunchann:20221218203426j:image

先日一人で散歩してていいなと思い写真を撮った場所を、彼も同様に撮っていた。示し合わせたわけでもないのに。あたしに言った「グルーヴ感が合う」という言葉の意味がわかるようになってきたこの頃。時間が過ぎるのが早すぎてキレそう。

 

f:id:seijunchann:20221219021155j:image

どんなに寒くても、夜遅くまで飲んだあとに歩く時間を、愛おしく思う。その日、ポケットに200円しか持ってなかった人が、なけなしの100円で買ったホットコーヒーを、ぬるくなりかけの超ベストタイミングで、猫舌のあたしにわけてくれた。車や人通りの少ない、小さなスナックや喫茶店が並ぶ道で、彼が「こういう店もきっと誰かの行きつけで、その人たちにも生活があるんだとわかるから好き」といったことを言っていたのがよかった。その感性が好きだと思った。てか、あたしにしかわからなくていいよ。あたしツイ廃だけど、本当に嬉しかった言葉は、Twitterにもブログにも書かないもん

 

 

 

今日の一曲

沢田研二 / 憎みきれないろくでなし