nuruinemuri

タイトルに偽りアリ

さざなみのような感情と、ささやかな祝祭

天気まで操ることができるんじゃないのか。お天気がこんなにも良かったのは、初めてだったかも。雨が降っていない時点で、もう別モノになったんだと思わされた。

確か去年はファーコートを着て行ったな、今年もそろそろ着るか、と引っ張り出してきたそれを羽織って、週末に比べちゃ人がまばらな道を、ずんずん歩いた。でも思ったより暖かかったし、まだライダースでイケたな。寒くもないのに、手がずっと震えていた。ひどく緊張していた。太陽と虎の入口に行くのもこわかった。落ち着くために、近くの室外機の前で缶チューハイを飲む。酒を飲んでいるのに、酔いが回らない。ただの炭酸水だ。

トイレに行っている間にSEらしきものが聴こえてくる。出遅れた。逆光の中、見慣れない4つのシルエットが浮かび上がる。下手にいた人が上手に、上手にいた人は真ん中に。別のバンドで歌っている姿を見たことがある人はギターを、中学生だった人はハタチに。

 

 

随分と久しぶりに歌っている姿を見た。いよいよ脚まで震えだす。きっと強すぎる照明のせいだった。すごく美しいものを見てしまった。胸がドキドキしたら恋の始まり、初めてがらくた見た時とおんなじ!

 

 

 

あたしは天邪鬼だ。どんな物事に対しても、愛が深まると、腹が立ったり、落ち込んだりする。今回も同様で、当日を迎えるまで逃げ出したい気持ちになり、腹を下し、誰にも会いたくないし、帰りたい気持ちになっていた。本当は、そんな好きじゃなかったのかも、とすら思った。そこに着いて、10代の頃から知っている人にその旨を打ち明けると、「あんたもうそんなことしたらあかんで、後悔は一生残るんやからな、辛くなったらあたしに連絡しておいで」と愛のある叱り方をしてくれて、その時点でもう、泣きたい気持ちになった。あたしは彼らが大好きだけど、ここで会える人たちのことも大好きなのだった。

 

 

 

よくわからないけれどホクホクした気持ちで三宮を後にし、酔っていたけれど乗り換えをもこなし、最寄駅に着くと、大貫妙子の都会がシャッフルで流れてきたとき、連絡がきて、また酒を飲んだ。店を出ると、スタート前の暖かさはもうなく、あまつさえぱらぱらと雨が降ってきた。絶対天気も緊張していたし、終わって涙を流してたんだよ!あたしが「寒い」と腕を組んでいたら、彼氏が着ていたかわいいアウターをファーコートの上から無理くり羽織らせてくれた。なんでも重ねたくなるたちだから、去年最後に学ランをもらったときのことが蘇って、デジャヴみたいでちょっと笑った。彼氏のアウターは、それよりずっと暖かくて、手のひらも赤子のようにあたたかくて、彼と出会えてよかったな、とばかり思っていた。

 

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どうすれば一番近くに寄り添えるか、行き場のない帰りの道端、繰り返して思案に明け暮れては我楽多を並べて安心した、なんちゃってね

 

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今日の一曲

King James version / I'll Still Love You