nuruinemuri

タイトルに偽りアリ

夢DUB、すなわちぬるい眠り

決まって2パターンの実体験に基づいた悪夢を繰り返し見る。

ひとつ目は、中学の部活の顧問が出てきて怒られるもの。もう10年も経つのに、多いときは週一でこの夢を見る。部活関係ない場面でも容赦なく出てきて、怒鳴ったり追いかけ回されたり、顔や尻をぶたれる。日常的に顧問を思い出すことはまあないのだが、夢で見るたびかなしい記憶が蘇ってきて、つらくなる。

ふたつ目は、信頼してたひとたちに裏切られるもの。これは去年実際に起きた出来事で、比較的最近のことだからか、頻繁に夢を見る。文字に起こすのもつらいので、内容は書かないが…脈絡のない夢でも、突然その出来事に変わってしまう。もう大丈夫だと思っていたのに、夢でもうなされなければいけないなんて腹がたつ。そして、全然立ち直れていない自分に腹がたつ。がばっと起き上がって涙とばくばく鳴る鼓動で目覚める。眠った気がしない。


以上ふたつがテンプレートなのだが、これらのリミックス的な夢まで見るようになった。色彩感覚バグったような視界がサイケデリックなものや、BGMにずっと聴いてなかった曲が爆音で流れていたり、夢が応用を効かせてきている。そう、夢も学ぶようで、ご丁寧に、飽きのこないように趣向を凝らして進化しているのだ。

妹に話し、調べているとどうやらこれはPTSDというものらしい。言葉は大学で習っていたので、まさか自分が、おおげさだと思っているのだが。

最近、仕事も人間関係も自分的にはがんばれていて、かなしかった出来事を思い出すひまがなくなっている。それだけ毎日充実している。なのに、夢はそれを許してくれないのか?深層心理を学びたい。

 

目覚めるたびにわたしは思い出す。

わたしはSNSのIDに「nuruinemuri」というワードを使っている。これは、江國香織の短編集のタイトルおよび表題作である。大学生の主人公・雛子が、半年間一緒にくらした恋人・耕介のことを思い出すところからはじまる。奥さんと籍を入れたままの彼と同棲し、怠惰な日常を過ごしていたが、突然別れの日が来る。新聞配達のバイトをする、不良っぽい高校生のBF・トオルと仲良くなり、楽しい毎日を過ごしていたが、ある晩白くて巨大なへびがやってきて、からだの上に乗られる。それからときどき、ずっしり重たいへびにうなされるようになる。とあるきっかけでへびの正体が嫉妬(陳腐な言葉になってしまうが)だとわかり、それ以来、耕介の部屋の電気スタンドや天井になって、雛子の魂は遊離し、耕介と奥さんの生活を見てしまう。

 

その話のなかでも気に入っている一文がある。

“世の中には、三種類の人間がいるのだと思う。善良な人間と、不良な人間と、どちらでもない人間と。どちらでもない人間は、狂おしいほど善良に憧れながら、どうしようもなく不良に惹かれ、そうして結局、どちらでもない人間はどちらでもなく、生涯善良に憧れつづけ、不良に惹かれつづけて生きるのだ。”

わたしは“どちらでもない人間”だ。どちらでもないなら、どちらでもないなりに、おもしろい人間になりたい。そう思いながら、今朝も眠った気がしないからだをむりやり起こし、ひたいの汗をぬぐうのであった。