nuruinemuri

タイトルに偽りアリ

女はギター2

サンローランのプライマーを鼻や額に、顔全体にはエスティローダーのダブルウェアを塗りたくるようになったので、梅雨明け、季節はもう夏。梅雨は本当にダメになる。しかし、それが現れたとき、あたしは不思議と焦りもせず、ひどく冷静だったのだ。体の奥底には、海があるのだといつも思っている。それはとても静かで、冷たくはなく、ただゆらゆらと波打つだけ。考える。たった1分だけのように、もしくは1時間くらいのように感じた。まばたきをしながら、自分がが発した言葉とともに、涙がぼろぼろ溢れた。

 

人生で最も慌ただしい夏だ。今まであたしは特にやりたいことがなくて、強いて言うなら顔にメスを入れたり、ちまちまとホクロやそばかすにレーザーを当てながら年を取っていくものだと思っていた。脳みそは不安とニコチンに支配されるなか、体は休むことなく細胞分裂しつづけ、それは眠っている間でさえ止まらない。毎晩、たくさんの夢を見る。本当のぬるい眠りだ。あたしがあたしじゃなくなっていくみたい。「どこにも行かないで」と駄々をこねたい。赤子みたいだった男が、あたしよりずっとしっかりし始めた。あたしだけいつまでも置いてけぼりみたいだ。部屋で音楽を聴くよりも、アコギが鳴っている時間のほうが増えた。「夏は一人で眠りたい」と言っていた一年前がひどく遠い昔のように思える。隣で眠るその人は「起きたら藍ちゃんがいて嬉しい」と微笑む。いびきをBGMにこれを書いている。

 

自分が大事にされていると感じるとき、同時に大事にしてくれている相手のことを、とても愛おしく思う。

 

君は誰、会ったことがある気がするけれど、きっと初めましてか。まだ眠っているのかな。何を思って、あたしに会いに来てくれたのだろう。リルケの詩を思い出す。どんな風にあたしに来たか。あたしのあごは、彼の髭の剃り残しがざらざらと撫ぜたせいで、ほんのり赤くなっている。毛繕いされる猫を思い出す。どこにも行かない、それまで眠り続ける。

 

 

今日の一曲

SCUM PARK / Have a Nice Day!

 

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あの子の彼氏とキスをしていたらクリームソーダは溶けて、気づいたら俺はなんとなく夏だった!?はーい、これが本当の「誰にもわかってほしくないから日記に書かないしあわせ」でーーーす!!!