nuruinemuri

タイトルに偽りアリ

にゃんこ大戦争

ピンクがよく似合う。人によくそう言われるし、自分でも確信している。だけど、戦闘服は黒でないといけない、と決めつけている。そう、これはただのおまじないだ。いつ何時でも自分と目標を葬れるように、全身黒を纏う。そして、スラム街で買った防弾ジャケットを羽織り、いつかもらった拳銃を片手に、腫れた瞼のことはバレないよう、ふざけたゴーグルをかけて。冷静と情熱のあいだで揺れる心臓をいったん止めて、恐る恐る家を出る。別の惑星へと向かう。大きな宇宙船にすし詰めにされ、目的地でほっぽり出される。戦場へ到着だ。

見知らぬ土地は、息苦しい。ただ歩いているだけなのに、手足がびりびり痺れてくる。もちろん、酸素なんてない。歩いている人間のことも知らない。宇宙人だらけだ。

覚悟を決めて最前線へ。目標を目視すると、一時は動揺したため、いっそのこと心臓はトイレに吐き出しておいた。目の前に落ちていたぬいぐるみを拾い上げると、思いの外冷静になっていることに気付く。何が欲しいのかは、自分ではっきりとわかっているからだ。不幸だったことは生まれてこの方一度もない、みじめだったこともない。だけど、そうなるくらいなら、欲しいものすら宇宙に置き去りにして、帰るつもりだった。今日のこの戦いも、自分の心を守るためだった。身体は減るもんじゃないけど、いつか若くなくなるし、あたしは強いけれど、また同じことがあるならば、心だってそのうち摩耗する。こんな思いをするならば要らない。エイリアンでも、ロボットでもないもの。

 

目標を仕留めて、命からがら帰宅し、脱いだ防弾ジャケットをそっと抱き締める。「注射器を捨てないで」の貼り紙を横目に、ゴーグルはゴミ箱に捨てた。残った弾は、未来のためにとっておこう。代わりに、ヘアブラシを手にした。出会った頃よりずっと伸びた後ろ髪が、水に濡れてくしゃくしゃに絡まるのを、そっと梳かしてあげる。呑気に目なんかつぶって。あたし、猫を拾った覚えはないんだけどな。もうまた帰ってこないなら、その時はよその子になりなね!

 

「ロコちゃん、仏の顔は三度までっていうけれど、二度あることは三度あるんでしょう、三度目があることをわかっていても許す心理は何?」「わからない、でも、“どっかり”好きなら仕方ないねえ、ハム太郎

 

今日の一曲

ボ・ガンボス / トンネルぬけて

 

f:id:seijunchann:20230105062130j:image