nuruinemuri

タイトルに偽りアリ

君が死ぬとき思い出すのは推しの子だから諦めろ

情緒が終わり始めると、森羅万象に感謝し始めるきらいがあるので、絶対に始まりは思い出したくないし、絶対に感謝などしたくない。強烈に心を奪ったその人は、宇宙人だった。あたしの毎日を侵略した。それなのに、田舎の電線に大量に留まっている名前もよく知らない鳥が一斉に飛び立つみたいに、居眠りして寝過ごした先の駅で慌てて電車を飛び降りるみたいに、放った精子を特売のティッシュでぞんざいに拭うみたいに、さっさとそこから消えていく。世の中の仕組みは、そういう風にできている。彼はきっと、地球に来るには早すぎた。

多感な時期に出会ってしまったのは、間違いだった。儚さは言い訳だ。想いが募って募って、頭がどうにかなりそうなときに突然姿を消して、勝手に心配して、エゴサして、変な噂も耳に入って余計に落ち込んで。もう会えないと思ってた時に戻って来てくれて。ギラついて、その場にいる全員を食ってしまいそうな、理性を持たない恐竜のような空気とは打って変わって、穏やかで優しい顔をするようになって。ああ、もう大丈夫だ、あたしも別に彼がいなくて大丈夫だし、と。うん、あたしもあなたも、もう大丈夫。

確かに初恋だったよ。

なんかあんまりやいやい騒がれるのは嫌だと思うので、この話はこの辺で終わり。

 

眠っているときの犬は、ポップコーンのにおいがする。この世で一番優しい生き物は、犬だ。いびきを子守唄にして眠る。海に投げ捨てたと思った指輪が、彼女の小さな秘密基地から出てきた。そして、ティファニーの紙袋をランチョンマットにして朝食を。これは過去への冒涜だ。朝日がやけに眩しい。お日様がウケていた。

 

クソ薬のせいで一生生き地獄、でも死ぬよかマシかなって感じの日々。これが超天獄?何が金平糖じゃ。コンクリートの砂漠は、ちょっと歩きづらいけど、どこまでも進める。爪が可愛いから。服が、靴が、可愛いから。お気に入りのスニーカーの底をすり減らしながら、あと少しで去るあたしだけの家へと帰る。錆びた方位磁石など使えねぇ。命のメロディーみたいな話だよん。

 

今日の一曲

信号 / sora tob sakana

 

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あたしも、いつかそこに骨を撒いてほしい